「世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい」読了。

昨日のゼミ参加後に、真っ先に読みたくなったので帰宅途中に購入。一気に読了してしまった。
この本のタイトルがとても気になっていて、半年くらい前から読んでみたいと思っていたのだがなかなか触手を伸ばせずにいた。
森達也氏と言えば、オウム真理教を被写体としたドキュメンタリー映画「A」、続編の「A2」の監督として有名である。本書の中でも書かれていたが、社会はオウムアレルギーが蔓延していて、オウム内部を撮影したというだけで「オウムのPR映画だ。」とか「森はオウムの幹部だ。」などと言われ相当の苦労をされたそうだ。私はまだその映画を観ていない。私の中にもどこかでオウムを忌避している部分があるのかもしれない。だが、読了した今はとても興味深く、見てみたいと強く思う。
本書を通じて森氏が訴えているのは、ただ一点。「他者への想像力」を取り戻すこと。
人は共同体に加担することで繁栄を築いてきた。その反面で、共同体の大義を掲げる事で人は思考停止状態に陥り、他者への想像力を失っていく。
オウム以降の日本に表層化した「他者への憎悪」は、9.11以降の世界に広がり、世界が思考停止状態になっている。他者への憎悪の連鎖を止める術こそ「他者への想像力」を取り戻すこと。
共同体の外側にいるからこそ見える視点を喚起させるべく提言しつづける。多数派に飲み込まれながらも揺るがない少数派としての姿勢に強く共感を覚え、私は強く励まされた。
オウムや9.11以外にも、放送禁止歌、小人プロレス、下山事件ベトナム最後の王位継承者クォン・デなど、メディアがタブーとして忌避してきた題材を通してメディアのあり方や社会のあり方を不安定ながらも緊迫感を感じさせる筆致で訴える。森氏の戦い続ける姿勢にリスペクトである。
早く「A」、「A2」も見なくては…

世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい

世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい



A [DVD]

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A2 [DVD]

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