「アフターダーク」読了。

冒頭から読者はカメラのような視点となって、物語を俯瞰する。そこは夜の街。
深遠なる闇に世界が覆われたとき、そこに佇んで偶然に交錯する登場人物たちの内なる闇が漏れ出す。闇と闇が惹かれ合い、一瞬混ざり合う。闇の世界が徐々に白み始める頃、またそれぞれの場所へ帰る。刹那的な触れ合いが交わされるありふれた一夜。それは人生においての点でしかないが、確実に、その後の各人の思考に影を落とす。
イマドキな人の触れ合いを描いた作品だろうか。村上春樹作品において画期的な三人称での進行。緻密な描写は、その緻密さとは裏腹に今を捉えきれていない相変わらずの時代錯誤感。後半にはそ描写の長さにじれったさを感じる始末。
メタファーはメタファー足り得ず、もやもやとした読後感。この読後感は村上春樹作品にはいつもつきまとうものなのだが、本作においては煮え切らない不完全燃焼な思いを残すばかりでかなり苛立つ。
正直、あんま面白くなかったでつ。過去作品の方が断然オススメ。

アフターダーク

アフターダーク