R.I.P。

リビングの窓際で柔らかな昼の日差しを浴びながら、一つの小さな死を看取った。
我が家で飼っているウサギが1羽死んだのだ。
母ウサギはダークブラウン、父ウサギはグレー。深夜に7羽の仔ウサギを生んだ。白、黒、グレーの仔ウサギの中で統一感を崩す綺麗なベージュ色の毛に包まれた仔ウサギは、毛の色から安易に「きなこ」と名付けられた。9年前の冬の日であった。
うさぎの寿命というのは6〜7年も生きれば十分なのだそうだ。満8才は人間で言うと70才くらいに相当するので、十分長生きした方らしい。
その死因は老衰と言えるだろう。苦しそうではなかった。静かに静かに、暖かな光を浴びながら陽だまりの中で死んでいった。日差しに照らされる姿は神々しく清らかで、そして美しかった。「死ぬ」という言葉よりも「天に召される」という言葉がふさわしかった。
往生の際を黙ってじーっと見つめていた。不思議な感覚だった。時間の感覚が歪んで感じられた。妙に清らかな気持ちで、音は掻き消えて普段生活している枠には収まらない“場”に向き合っていた気がする。命の消える瞬間に立ち会ったのは実は初めてだ。死に行く者と一対一で対峙した初めての瞬間。看取った後、事を成し遂げた達成感で清々しい心持ちだった。不思議と悲しみはあまりなかった。
生きているものには介入できない領域に揺らぎながら旅立っていった小さな命を、黙って笑顔で見送ったんだ。