SEASONS CHANGE

この週末、気持ちの良い天気の土日だった。
土曜の朝、寝ぼけながら窓際に出来た陽だまりで午前の柔らかな日差しにすっぽりと包まれていた。たばこを買いがてらに出た外は、風は強かったけど空はきれいに晴れ渡っていて、なによりとても暖かかった。
冬の間無意識にキュッと固く縮めてきた筋繊維が暖かな空気に緩められていくのが気持ちいい。ずっと背負っていた重い荷物を下ろすとふわっと体が軽くなったように感じるが、その感覚に似た解放感が体を突き抜けていく。無性に嬉しくなって、軽くなった体の感覚を確かめるように閑静な住宅街をのんびり歩く。
ピントを少し甘くしたような空気の中で、冬に比べて確実に力強くなってきた日差しに照らされた世界には植物のビビッドな色彩が輝いていて、それらの放つ匂いが混じり合って嗅覚をくすぐる。吸い込む空気の中に春の粒子を感じる。本当に気持ちがいい。時間を忘れさせるほどの気持ち良さで、気付けばたばこを買うのに2時間もかけていた。
夜型生活の日常で乱れた体が光合成をして、堆積された毒素が抜けていく感じ。闇夜には感じられなかった季節の移ろいを、五感を通して細胞が実感してる。長いこと忘れていた感覚。生き物のサイクルに引き戻されていくように、活力が漲っていく。
待ちわびた春は、もう来ていた。
ここしばらく、環境を変えたいという思いが目覚めの時を待つようにもぞもぞと高まっていたのだが、春の訪れとともにその思いは目を覚まして、駆動しはじめた。