一冊目は「マンガ金正日入門−拉致国家北朝鮮の真実」。

太陽政策下の韓国で発禁処分となり、昨年日本で出版されてお茶の間ワイドショーの延長線上的に話題となった反・金正日体制漫画。
狡猾な謀略と凄惨な粛清による権力闘争の末に築かれた、金日成金正日親子の絶対的独裁体制の成り立ちを北朝鮮の歴史を紐解きながら迫っている。まさに入門といった趣の内容。
北朝鮮問題について、私は自分なりの明確な回答を持っていない。北朝鮮について考えるのを忌避している気がする。
自己保身と虚栄心の権化と化した、傲慢極まりない振る舞いの独裁者が断固許されるべきではないことは自明である。だけど、どうしても私の思考は北朝鮮の人民に向かってしまうのだ。そのことを考えるとやるせない気持ちになる。
主体思想という暴力的な思想を徹底的に教育され、将軍様の意に少しでも背けば反乱分子として非道な粛清を受ける。絶対的権力をフルに行使して恐怖による統治をされている。共同体における強者は弱者の上に成り立っている。このトップダウン的構造は決して他人事ではなくて、資本主義社会にも現実にある。森達也氏の言う「共同体の負のダイナミズム」である「思考停止」だ。金正日への憎悪が、北朝鮮全体への憎悪に入れ替わっている気がしてならない。我々の日本という共同体も同様に「思考停止」状態になっている現状を考えると、北朝鮮に向けていたはずの剣先が、いつの間にか自分の喉元に突き立てられている。それが息苦しくてたまらないのだ。
もちろん、自由な思考すら許されていない北朝鮮国民の「思考停止」と、我々の妄信的な「思考停止」は似非であることは自明のことである。でもきっと、思考を働かせることで苦悩という壁にぶち当たるのは一緒だ。考えない方が楽な状況というのは同じだろうと思う。
北朝鮮と違って私達は貧困に喘いでないし、飢餓にも苦しんでいない。なにより自由がある!」
そう思うのだが、我々が声高に言う自由も密やかな統制に侵食され始めている気がして、やりきれない気持ちになる。
外交問題は生半な感情論を排除して論理的に考える必要があることが、日々のワイドショーやマスコミによる煽情的な報道で霞んでいく。思考がちぐはぐになって脳みそがギュッと締め付けられる。空転を続ける頭に浮かぶのは「思考停止」からの脱却ということ。そして、いつも明確な答えが出せずにモヤモヤしてしまうんだ。

マンガ金正日入門 北朝鮮将軍様の真実

マンガ金正日入門 北朝鮮将軍様の真実